【劇場版パトレイバー2】第二小隊の質低下を示すシーンの解説【いいわけないじゃないの】

多数のメディアミックスを展開しているSF作品

機動警察パトレイバー

人型ロボット(レイバー)を用いた犯罪と、それを取り締まる警察側のレイバーの活躍を描いた作品です。

いわゆるリアルロボット物に分類されるジャンルながらも、レイバー同士のカッコいいアクションにとどまらず、様々な登場人物の知略策謀巡らせた動きも大きな魅力です。

その中でも主人公サイドの策略家「後藤喜一」が発する発言には多彩な重みが加えられており、物語への没入感を高め、また後藤の格好良さも際立たせる要素です。

今回は、劇場版パトレイバー2で描かれた第二小隊の質の低下について解説していきます。

概要

本作は原作(マンガ・アニメ)から数年後の時間軸のストーリーであり、主人公を務めた泉野明ら特車二課第二小隊の面々の大半が新たな配属先に異動になっています。第二小隊に残っているのは隊長の「後藤」と、寡黙な優しき巨人「山崎ひろみ」のみという状態です。

第二小隊には代わりに新しい隊員が配属されていますが、彼らにフォーカスが当たることは殆どありません。

その数少ない活躍の場が、今回後藤が呆れ顔と共に発した「いいわけないじゃないの」という言葉につながる登場シーンです。

端的に言えば、泉野明ら初代の隊員に対して出来が悪いということを表す象徴的なシーンになります。

発言の真意

作中冒頭、第一小隊の隊長を務める「南雲しのぶ」が警視庁に出張をしていましたが、とある事件により帰隊が遅れているという場面です。

第二小隊の隊員の一人がそのことを後藤に伝えます。ちなみにこの時の当直任務は第二小隊が務めており、南雲が帰隊すれば第一小隊に当直を引き継げるという状況でした。つまり、予定された業務時間を過ぎているということですね。

隊員の報告を聞いた後藤は「何時くらいになりそうだって?」と尋ねますが、「さあ、そこまでは」と他人事感満載の返答をしました。社会人経験のある方ならわかることでしょうが、単なるガキの使い的な行動は十分な仕事とは言えません。

この隊員は、帰隊が遅れるという南雲の言葉をそのまま控えて後藤に伝えただけのメモ書きの役割しか果たせておらず、自身の受け持った業務に対する姿勢が非常に低いと言わざるを得ません。

その後、特に報告を続けるでもなくモジモジしている隊員に対して何かあるのかと後藤が問うと「定刻を過ぎたので第一小隊に引き継いで帰宅してもいいか」と遠慮がちに発言しました。まあ気持ちはわかりますけどね。

それに対して「別にいいけど南雲隊長が戻っていないしな」といった具合に後藤は答え、隊員も「やっぱまずいですよね」と言います。しかしその直後に後藤が「まあいいか、俺もいることだしさ」と冗談めかして言ったところ、隊員は嬉しそうに「いいですかね」と第一小隊への任務の引継ぎと帰宅を宣言して去っていきました。

その後姿を笑顔で見送った後藤が急に真顔になり発したのが

「いいわけないじゃないの…」

という一言でした。

後藤は報告を受けている間、ずっと釣りに集中しているように隊員のほうに顔を向けません。やる気の感じられない態度の隊員に対しては徹底的に見放した態度をとるのが後藤です。

しかし、最後の「別にいいか」のところから隊員のほうを向き、相手の出方を伺います。南雲隊長が帰っていない以上、指揮機能が不完全な第一小隊に当直任務を引き継ぐなど言語道断です。しかし経験の浅い隊員がそう思ってしまっても無理はないと思ったのか、南雲がいないことに対する苦言を呈した後に、隊員の意識が変わったかどうかのテストを行ったのです。

おそらく泉たちであれば、自身の考えの甘さや間違いに気付いたうえで、南雲が戻るまで当直を継続すると判断するでしょう。警察官として引き継ぎもできずに定時だから帰るという考えは間違っていると言わざるを得ないのです。

しかし、この隊員は後藤の出したテストにまんまと引っ掛かり、後藤の呆れ顔と「いいわけないじゃないの」という失意の言葉を引き出してしまいました。

まとめ

後藤は部下に対して命令も強制もしたくないという信条を持っています。どんな状況であれ各個人の判断の精度を上げるための方策を優先し、答えを押し付けることはしません。

同時に部下のとった行動は上司の責任であるという意識も持っており、積極的な介入はしないものの全体を深く理解しようとします。

教育熱心かと問われれば判断に迷うところがあります。少なくとも右も左も分からないような相手に対しては不親切な指導方針といわざるを得ないでしょう。

しかし後藤の立場は特車二課第二小隊隊長であり、ずぶの素人を相手にしているわけではありません。基本を習得したはずの警察官を相手に指導する立場であり、基礎の基礎から手取り足取り教える人ではないのです。

やる気のある人間に対する手助けは惜しまず、関係各所への根回しや土台作りなど、管理者としてすべきことは持ち前の人脈を駆使してサポートしますが、逆にやる気のないものに対しては徹底的に無関心になります。

現に劇場版2作目の本作では、後藤は独自に行動し新しい第二小隊のメンバーを使うことはありません。終盤で頼るのもかつての部下たちでした。

前作で酷使させられた遊馬とは違う評価をしているというのがよくわかりますね。

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