リアルロボット系SF作品
機動警察パトレイバー
警視庁警備部特車二課に配属された若き警察官たちが様々な事件に遭遇し、時に辛酸をなめつつも成長していく物語です。
今回の解説は主人公たちの上司である中年オジサン
後藤喜一
部下からは後藤隊長と呼ばれ、彼を知るものからは「昼行燈」「カミソリ後藤」など様々な呼ばれ方をします。
さえない見た目にも関わらず多分に魅力を含む彼のキャラクター性に迫ります。
※機動警察パトレイバーはメディアミックス作品であり、各メディア作品によって設定が大きく異なります。この記事では基本的に漫画版およびアニメ劇場版の設定を取り上げます。
概要
言うまでもない事ですが警察官であり、階級は警部。特車二課第二小隊の小隊長を務めています。
特車二課とは「警視庁警備部特科車両二課」の略称です。従来警視庁警備部には「特科車両隊」と呼ばれる放水車や重機などの特殊車両を装備した部隊が編成されていました。
作中ではレイバー犯罪の増加に伴い、警察のレイバー隊(パトレイバー)を特科車両二課として実験的に新設しました(そのため従来の特科車両隊は特車一課となっています)。
ちなみに特科車両隊は現実にも存在しており、警備部の第十機動隊として編成されています。
物語開始時点で特車二課の第一小隊が稼働していましたが、レイバー犯罪の増加に伴い人員が不足し、補充として第二小隊が新設されます。その小隊長として赴任したのが彼、後藤喜一です。
普段はダウナーな雰囲気を醸し出し勤務態度も真面目とはいいがたいのですが、状況判断能力に長け、豊富な人脈を駆使した広範囲にわたる根回しなど、策略家や戦略家タイプの人物です。
人物像
不真面目かつ無気力な勤務態度であり、特車二課での存在感は大きいとは言えません。
第二小隊の部下に対しても命令や強制を好まず、各個人の自主性を伸ばす放任に近い指揮を行っています。とはいえ全く口出ししないわけではなく、明確な誤りには語気を荒げて諭すこともあります。
実際に、特車二課で一番偉いのは整備班長の榊、次に第一小隊の南雲隊長、そこからぐっと下がって後藤隊長と揶揄されており、組織の運営においては表立って活躍する人物ではありません(特車二課課長はこの時に名前もあがらないほど空気なわけですが…)。
ただし上述の通り切れ者なのは確かであり、往々にして暗躍めいた行動をしています。警視庁内外に対する幅広いコネや人脈、警察組織としてのルールからの逸脱行為、自分の部下はおろか第一小隊すらも利用する行動など、やや常軌を逸した手法を取ります。
これはおそらく、彼の出身部署が「公安部」であることにも関係しているでしょう。国家体制に対する犯罪を担当する公安はいろいろと都市伝説めいた曰くのある部署です。誤解を恐れずに言えばスパイや秘密警察に該当するでしょう。
公安時代の彼はルール違反、上司への恫喝、マスコミへの情報リークなど必要に応じて躊躇なく行うほどの相当なワルだったようですが、しかしそれ以上に切れ者であり「カミソリ後藤」という渾名がつけられていました。しかし、切れすぎるというのは時として組織にとっては邪魔者であり、埋め立て地を拠点とする特車二課に島流し的左遷をさせられたのです。
もちろん警察官としての使命感は持っており、社会に仇名す犯罪行為に対しては(手段を問わず)熱心に対応します。また幅広い見識を持っており、多角的に状況を判断した作戦立案は敵の意表を突くこともあります。その場合はたいてい味方も欺かれているのですが。
活躍
主人公の泉野明を始めとした特車二課メンバーは個々の事件を解決しますが、根本的な事態の解決は後藤の活躍(暗躍)があってこそです。
部下は現場仕事を、自身は状況の操作を、という住み分けをしているようにも取れます。基本的に前面に立つことは少なく、状況の解決に向かうように水面下で舞台を傾けるタイプの活躍をします。
しかし腕っぷしが弱いかといえばそうとも言い切れず、漫画版では旧日本兵の幽霊の斬撃に対して身をひるがえして避け、鉄パイプで応戦します。警察官である以上、剣道柔道は一定ラインの実力を持つと考えるべきでしょう。
名言
彼を紹介するうえで切っても切り離せないのが、たびたび言い放つ「名言」にあります。
それは状況を的確にとらえたものたったり、心情を表すもの等、癖になる名言が多いです。
以下に彼の人となりが分かる代表的な名言を挙げましょう。
助言はしてやれ。手助けはするな。
特車二課のレイバー「イングラム」のOS立ち上げに苦労する泉野明を見た篠原遊馬が、代わりに設定しましょうかと申し出た際に後藤の言った言葉です。
あくまで各人の能力を高めることを重要視しており、言われたことだけしかできず、出来ないことは出来ないままのボンクラを良しとしない考えが分かります。
幸い第一小隊は苦戦中だ。
第二小隊の初陣である出動時に後藤が言い放った言葉です。
相手のレイバーはクラブマン・ハイレッグという水辺での行動に優れた機種であり、都内を流れる川沿いでの迎撃に向かった第一小隊が苦戦していました。初陣で活躍することにより第二小隊への懐疑派も多い上層部へ部隊の必要性を見せつけたいという思惑の元、味方である第一小題を前座とする作戦を考案していたのです。
おれたちの仕事は本質的にはいつも手おくれなんだ。
これは警察という仕事の本質を突いた言葉だと思います。そして警察力の限界も表しています。
警察が出動する状況というのは常に事件が発生した後です。抑止力も当然ありますが、ただ怪しいからと言って市民生活にグイグイと介入できるわけではありません。つまり事態の解決をする力は与えられていますが、事件を防ぐ力は十分だとは言えないのです。
いいわけないじゃないの
劇場版二作目にて呆れ顔という珍しい表情とともに放たれた言葉です。
本編から数年後の時間軸で、特車二課の面々も大きく様変わりしています。隊員の一人が「定刻になったので第一小隊に待機任務を引き継いで帰宅していいか」と後藤に尋ねたのです。この時点で第一小隊の南雲隊長は出張から帰っておらず、警察官として普通に考えれば定刻だから帰宅したいなどという申し入れをすべきではありません。
それに対して「いいんじゃない?(第二小隊長の)俺もいることだしさ」と冗談めかして答えたところ、それを真に受けた隊員は本当に帰宅の準備を始めたのです。
その背を見送った後藤が言ったのが「いいわけないじゃない…」というわけですね。普通なら帰宅するという考えを改めるべきです。おそらく泉や太田なら考えを改めるでしょうね。やる気のない人間には無駄な説教もせず見放すという彼の人柄が見受けられます。
遅すぎたと言っているんだ
同じく劇場版二作目にて、これまた珍しい激高した顔とともに放たれた言葉です。
自衛隊内の一部勢力がクーデターを画策している状況で、事なかれ主義の警察幹部が治安維持のために独断で動こうとした南雲隊長の尋問を続けていました。あまりに無様な警察幹部の姿をみた後藤は、クーデター首謀者の目論見に気付くのが遅すぎたの悟ります。そのさなか、陸自の攻撃ヘリが都内各所の重要インフラに対して攻撃を始めます。その一報が会議室に飛び込み狼狽える幹部たちに対して語気を荒げて言い放ちます。
まとめ
パトレイバーという作品において、おそらくほとんどの読者視聴者の印象に深く残る人物でしょう。
一見不真面目でも切れ者。
このかっこいい要素が無理なく体現された魅力的なキャラクターだと思います。
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