SIRENの魅力を徹底解説。他のホラーゲームとは一味違う設定。

現代日本の寒村を舞台としたジャパニーズモダンホラーゲームの金字塔。

SIRENシリーズ

特に初代SIRENは鬼畜な難易度を誇りつつも練り込まれた設定と多種多様な登場人物が織りなす群像劇から人気を博しました。

その後、続編のSIREN2、初代のリメイク的なSIREN New Transrationが発売されました。

現在では続編の発表は絶望的な状況ではありますが、初代の発売から20年以上経った現在でも愛されている傑作です。

今回は、初代サイレンがもつ他のホラーゲームにはない魅力を3つ解説します。

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敵の設定

プレイヤーが対峙する主な敵は「屍人」と呼ばれる不死身の怪人です。見た目は一般的なゾンビのようであり、目や口から血を垂れ流してプレイヤーに襲い掛かります。

しかし、彼らの行動原理などの設定は一般的なゾンビとかけ離れています。

行動原理

大半の屍人はプレイヤーを含めた生存者を見掛けるまでは生前の日常生活を模倣し、不完全ながらも知性や記憶を持ちます。

ゾンビとは異なり「単純な動く死体」ではなく、人間が神の世界の要素(赤い水)により変異した存在のためです。

彼らの最大の目的は「神の世界と一体化」することであり、準備が整い次第「赤い海」の向こう側へと受け入れられます。ただし、準備の済んでいない個体はより変異が進んだ状態で羽生蛇村に戻ってきます。これが犬屍人や蜘蛛屍人、頭脳屍人と呼ばれる変異種です。

つまり、人間を襲うのは屍人にとって最大の目的というわけではないのです。

人を襲う理由

例えばゾンビであれば空腹を満たすためだったり、感染者を増やしたいというウイルスの本能だったりと、敵意や害意によって人間を襲います。

しかし、屍人が人を襲う理由はなかなかユニークなものです。

それは「他の人も自分と同じ屍人にしてあげたい」という善意に基づいているという点です。

屍人は神の世界の存在を知っており、機が熟せば神と一つになれることを知っています。彼らにとって現時点の暮らしは途中経過に過ぎず、やがて来る救いの時までの時間潰しに過ぎません。

生前の悩みから解放され、不死身の肉体を持ち、明確な幸福が来ることを知っている屍人たちは、自分たちの置かれた素晴らしい世界に他の人も迎え入れたいという幸せのお裾分けが根底の考えになります。

その結果、人間を襲い屍人化の手伝いをしようと善意の押し売りをしてくれているというわけです。

屍人になる条件

上述の通り、屍人は神の世界と繋がり、他の人も自分がいるのと同じ幸福に満ちた世界へ引き入れようとしています。

では、なぜその手段として攻撃を選ぶのでしょうか。

その理由は屍人化の条件にあります。

人間が屍人になる条件として、「体内に赤い水を一定量以上取り込む」もしくは「僅かでも赤い水を取り込んだ状態で死亡する」ことが必要です。赤い水は異界化した羽生蛇村の至る所に存在しており、空からは雨としても降ってきます。

赤い水の正体は「堕辰子」と呼ばれる神の一種の血液であり、太古の羽生蛇村の村民により食殺された堕辰子の血が異界には出現しています。

この赤い水を体内に一定量取り込んだ時点で屍人化が始まります。ただし、屍人化に至らなくとも極少量の接種でも人間の基準から外れてしまうため現世への帰還は不可能となります。キャラクターがダメージを受けた際に時間経過で回復するのは赤い水の作用とされています。

この「体内に取り込む」という条件ですが、なかなかシビアなもので、

  • 経口摂取する。
  • 傷を負い血を流すと、同量の赤い水が体内に入る。
  • 皮膚に触れると体内に入り込む。

つまり、完全に無傷であっても雨に降られた時点で人間に戻ることは出来なくなります。

ここから分かるように、屍人化に必要な要素は、赤い水を必要量摂取させるか、異界で人間を死亡させることです。それを最も効率よく行うために人間を攻撃して血を流させているのです。

ちなみに屍人が目や口から血を流しているのは、体内で赤い水が血液の代わりに流れるようになり、従来の血液を体外に排出している生理的な現象です。

練り込まれた設定

初代サイレンの特徴である高難易度ですが、これはゲームプレイにおける難易度に留まりません。

普通にプレイしていると難解な設定が多数登場し、理解に苦しむ場面があります。それもそのはず、本編内では明確に語られていない隠し設定が無数に存在し、それを断片的に描写することで考察をするスタイルの作品です。

日本を含めた世界中の神話や民話をベースにしており、それらをうまく組み合わせた設定により形作られた世界です。

「羽生蛇村(はにゅうだむら)」も航空機の失踪が多発するという都市伝説の「バミューダトライアングル」のバミューダを変形させていたり、ステージ名(地名)も様々な元ネタが存在します。

普通にプレイしているだけでは全ての答えにたどり着けない練りこまれた設定が世界観を強固にしており、それをさらに過酷な難易度で彩ることによって不朽の名作となりました。

ちなみに作中の設定を解説してくれている下記の公式本が発売されています。私のサイレン知識の多くが本書から得ています。

多少値が張りますが、SIREN好きであれば買って損することはありません。是非お手に取ってください。

多様な性質をもつ登場人物による群像劇

本作には明確な主人公は存在しません。最も知名度の高いキャラクターは「須田恭也」でしょうが、実は彼が主人公というわけではないのです。最初にプレイアブルキャラクターとなり、最後に堕辰子を倒して異界ジェノサイダーとして永遠に異界をさまようことにはなりますが…。

SIRENは群像劇であり、様々な人々が時に協力し、時に独自の行動をした結果によって形作られる世界です。とあるキャラクターにとっては何の意味もない些細な行為が他のキャラクターにとっての突破口になり、すべてがうまく組み合わさることでストーリーが進行していきます。そして正しくない選択肢を取った世界は羽生蛇村の囚われた異界の因果律に基づいて時間を巻き戻されて延々とループすることになります。

一人のヒーローの行動によって進行するということはなく、それぞれのキャラクターが各々の判断で人生を歩みました。そして多くの者が斃れ、屍人として再び立ち上がります。

須田恭也はたまたま堕辰子を倒す役割が与えられただけであり、彼のための世界ではありません。終盤にかけては彼の活躍はほとんど描かれず、たまたま出会ったキーパーソンである美耶子と懇意になり、たまたま訪れた場所で堕辰子を倒すことができただけでした。その舞台を作ったのは異界に取り込まれてしまった犠牲者であるすべての登場人物たちなのです。

そして異界の羽生蛇村の因果律が固定されたという性質上、彼らにはあらかじめ決められた役割があったわけなのですが。

まとめ

SIRENが発売されるまでの多くのホラーゲームはバイオハザードに代表されるような、強力な敵が敵意を持って人間に襲い掛かり、人間側もこれまた強力な火器を用いてバッタバッタとなぎ倒していくという作品がスタンダードでした。

SIRENは民話的な要素をうまくSFに取り入れ、そこに現代日本の村という要素も混ぜ込みました。当然強力な兵器など登場せず、登場人物たちの多くが民間人で戦闘のプロなどいません(2で自衛官が登場するまでは)。

せいぜいが猟銃や警察官の拳銃程度であり、他の武器といえば農具や調理器具、様々な日用品で構成されています。堕辰子を葬ることになる須田恭也もなぜか「火掻き棒」(通称:ヒカキボルグ)という先が曲がっているだけの鉄の棒を愛用していたくらいです。

また、キャラクターたちは敵を爽快に倒すどころか、敵の攻撃を無視してごり押しクリアするなんてこともできないほどの貧弱さを誇り、対する屍人は完全な不死身という不平等なゲームです。

しかし、それらをスパイスとして謎解きだったり、これまた特徴的な「視界ジャック」を駆使して敵の目を搔い潜るというステルス性の高いゲームスタイルを確立しました。

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