「よつばと!」はなぜ面白く人気なのか

あずまきよひこ氏によって不定期連載されている大人気コミック

よつばと!

小岩井よつばという女の子を中心に描かれるほのぼの日常漫画です。

連載から20年以上経過し画風は変わってきていますが、作風自体はそれほど変化していません。

今回は、よつばとの世界がなぜ魅力的なのかについて解説します。

概要

「小岩井よつば」という5歳の女の子が主人公です。父親の小岩井葉介と二人暮らしをしていますが、葉介が在宅勤務者のためか、よつばは保育園や幼稚園には通っていません。

主に小岩井家の暮らしの描写、隣の家の綾瀬家との交流、葉介の友人であるジャンボややんだとのやり取りが描かれます。

敢えてカテゴライズするなら「日常ギャグ」になるのでしょうか。

なぜ魅力的なのか

本作は、連載開始当初には「オタクの夢を描いた作品」とやや馬鹿にされた評価をされたこともありますが、現在では老若男女問わず幅広い読者層を持ちます。

本作には大人になると失ってしまうものが多く描写されています。

時にはかつての自分を思い出し、時にはこんな生活が送りたいと思わせ、それを疑似体験させてくれるのが本作の魅力です。

以下に具体例を挙げていきましょう。


優しい世界

作品全編にわたって、世界の汚い部分は殆ど描かれません。それについては作者が明言しており、よつばと!はよつばの視点を中心に描いており、親(葉介)に守られた子供(よつば)が知ることのできる世界を描くようにしているとのことです。

『よつばと!』15巻は本当はもっと長かった!? あずまきよひこさんに聞いた制作秘話 | ダ・ヴィンチWeb
あずまきよひこさんによるマンガ『よつばと!』(KADOKAWA)の最新15巻が、約3年ぶりに刊行された。2003年に連載開始された同作は、四つ葉のクローバーのような緑色の髪形をした5歳の少女・よつばが、大好きなとーちゃんと一緒に日常を全力で...

よつばの奇行に対して嫌な顔をする人も殆どいませんし、深刻な事件が描かれることもありません。描写されていないだけで嫌なところが存在しない世界というわけではありませんが、辛い現実と同じ世界を描く作品ではないのです。だからこそよつばと!では読者の興味を引き付ける優しい世界が形作られているのです。


ご近所付き合い

よつばを接点として、小岩井家と隣の綾瀬家は家族ぐるみの付き合いになっています。果たして隣近所の家庭と良好な関係を築けている人がどのくらいいるのでしょうか。隣の子供を預かって一緒に出掛ける、隣の大学生と一緒に出掛けるなんて経験がある人はどのくらいいるのでしょう。

そんな関係がよつばと!の世界では描かれます。それも下心や策略なんか何もなく、仲良しだから一緒に遊びにいくだけという間柄で。

近所付き合いが希薄になっているといわれて久しい現代です。隣家の人の名前も顔も知らない人という人もいるでしょう。それが悪いことだとは言いません。しかしよつばたちを見ていると無性に羨ましくなるのです。


大人になっても一緒に遊べる友達の存在

よつばのとーちゃん、小岩井葉介には二人の友人がいます。ご存じジャンボやんだです。

彼らはいい歳して学生のようなノリでつるみ、馬鹿話で盛り上がり、よつばを交えて本気で遊んでくれる間柄です。

果たしていつからでしょうか。仕事や家庭を優先して友達と会わなくなったのは。会うといっても年に数回、一緒に酒を飲みにいき、しかし翌日に備えてバカ騒ぎをしなくなったのは。転居に伴い疎遠になった友達と今後の人生で再開することはあるのでしょうか。

大人になると新しく友人を得ることは途端に難しくなります。かつての交友関係を維持するのもままなりません。それを成し遂げた世界がよつばと!の中にはあるのです。


まとめ

マンガを始めとしたフィクション作品には様々なテーマがあります。

辛い現実を描いて共感することで安心感を得るもの、非現実的な描写でスペクタクルを得るものなど、それぞれの作風が存在します。

そういった点でいえば、本作は徹底して子供の視点での世界が描かれています。必要のない描写は省き、テーマに沿った世界の構築がされているのです。

それが日常的でありつつも、ほんのりとした羨望を感じられる魅力を生み出しているのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました