雛見沢症候群
「ひぐらしのなく頃に」シリーズに登場する架空の病で、登場人物が引き起こしてしまう惨劇の一つの要因であり、鷹野を筆頭にした国家レベルでの陰謀のカギともなる重要な要素です。
作品の根幹を構成する要素の一つでありつつも、作中で明言されるのは解答編の皆殺し編からとなります。
具体的にどのような症状がでるのか細かく描写はされておらず、理解がしにくいこともあったかと思います。
この記事では、雛見沢症候群について以下の項目で解説します。
- 雛見沢症候群の概要。
- 各編における作用。
ひぐらしのなく頃に関連記事の一覧はこちら
雛見沢症候群の概要
物語の舞台となる架空の村「雛見沢」に古くから存在する風土病を指します。寄生虫由来の感染症で、雛見沢にある程度滞在したほぼ全ての人物に空気感染するとされています。
そのため、2000人の村人が潜在的な感染者ではあるものの、発症のトリガーとなるきっかけさえなければ無症状であり、基本的には無害な病気と言えます。
この病は一般には秘匿されており、政府の極秘機関である「入江機関」が研究及び治療方法の確立のための秘密裏に雛見沢で活動しています。
どんな病か
寄生虫が脳に寄生することによって感染し、発症者の精神に大きな影響を及ぼす病になります。
二次世界大戦中に雛見沢出身の兵士が異常行動を取ることが多いことに気付いた軍医の「高野一二三」が発見しました。
発症のトリガーになる要素は2つ。
- 雛見沢(女王感染者)から一定期間離れること。
- 強いストレスを受け続けること。
これらの要素は二つともが雛見沢から徴兵され戦地に赴いた兵士にも当てはまり、戦場における異常行動の引き金になっていたようです。
精神面と肉体面双方に症状が現れ、それは次のような段階を踏みます。
症状
感染者は発症段階に応じてレベル分け(L1~L5)をされており、各レベルと症状については下記となります。
L1
状況:雛見沢を訪れる際に予防薬を投与されている状態
概要:発症しても症状が進行するリスクが低い状態です。
対象:入江機関の要員が当てはまります。
L2
状況:予防薬を摂取せずに感染、発症した状態。
概要:自覚症状は無く、通常の生活において発症することはほぼありません。
L2以降の感染者は緊急マニュアル第34号の発動時の殺処分対象となります。
対象:雛見沢の住民の殆ど全て、雛見沢に滞在したことのある人物が当てはまります。
L3(-)
状況:強いストレスが続いたり、雛見沢(女王感染者)から長期間離れることにより症状が進行した状態。
概要:何者かの気配を感じたり音や声が聞こえることがありますが、日常生活にほとんど支障はありません。
ただし、軽度の体調不良を覚えることもあり、ただの風邪だと認識されることもあります。
また、L5まで症状が進行した者が治療により回復できる限界レベルになります。
定期的な投薬によりL3(-)に症状をとどめることで日常生活を送ることが可能です。
対象:鬼隠し編序盤の圭一、治療後の沙都子が当てはまります。
L3(+)
状況:発症後に適切な対応がとられず、(-)よりも症状が進行した状態です。
概要:幻覚や幻聴が始まり、周囲の状況を悪い方に曲解する傾向が顕著になります。
対象:鬼隠し編中盤の圭一、罪滅し編中盤のレナが当てはまります。
L4
状況:さらに症状が進行し疑心暗鬼に支配され、幻覚や幻聴の症状も悪化した状態です。
概要:存在しないものが見えたり聞こえたりし、周囲のあらゆる物事を自身を害するものとして曲解します。
対象:祟殺し編終盤の圭一や沙都子が当てはまります。
L5-
状況:周囲のあらゆる状況に対して強い疑心暗鬼と被害妄想を覚える状態です。
概要:個人差はありますが、リンパ腺の痒みが現れ、皮膚が破れるほどに搔きむしることがあります。
正常な思考が困難になり、暴力的になったり支離滅裂な発言など、異常な行動を取り始めます。
対象:罪滅し編終盤のレナが当てはまります。
L5+
状況:症状の末期状態であり、極度の疑心暗鬼と被害妄想で見聞きする周囲の状況すら正しく認識できない状態です。
概要:周囲の人物が自分や大切な人を殺そうとしている・殺したという被害妄想に囚われ、自己防衛のために致死的な暴力を振るうようになります。
錯乱状態にあり行動原理が支離滅裂になりますが、部分的には冷静さが残っており、残虐な行為を意図的に行うこともあります。
リンパ腺の痒みが強くなり、喉を掻き破って死に至るケースが多くなります。
対象:鬼隠し編終盤の圭一、失踪直前の悟史、綿流し・目明し編の詩音が当てはまります。
治療方法
入江機関が開発したC120という注射服用する治療薬が存在しています。この治療薬の開発に当たっては、数多の動物実験と人体実験が繰り返されており、入江機関に確保された発症者に対する実験では多くの成果をあげたそうです。
以下は余談ですが、雛見沢症候群の特徴の一つとして、感染者が死亡すると体内の寄生虫も消滅してしまうという厄介な特性があります。そのため、発症者の遺体からはめぼしい情報は得られず、必然的に生きた感染者が必要となるのです。
入江機関においては、研究のために、少なくとも二名の感染者が生きたまま頭蓋を開けられ脳をいじくりまわされています。
その犠牲者は、現場監督バラバラ殺人事件の逮捕されていない犯人と、古手梨花の母親です。
犯人は錯乱状態にあったところを山狗に確保され検体に回されました。
梨花の母親は梨花に対する各種実験を拒否したために鷹野の怒りにふれ、山狗に拉致されて無理やり解剖されました。
控えめに言ってイカレていますが、その非人道的な研究のおかげで沙都子の症状は抑えられているのも事実なのです。
入江診療所(入江機関)
雛見沢に開院している診療所ですが、その実態は雛見沢症候群の研究を目的とした極秘機関です。
日本政府が秘密裏に設立しており、研究者のほかに様々な工作を担当する「山狗」という特殊部隊を擁しています。入江機関のパトロンは「アルファベットプロジェクト」と呼ばれる派閥であり、日本の軍事力強化を目的とした右派の組織です。
名前の「アルファベット」も、核・生物・化学兵器を示すABC兵器から取られた通称です。
ちなみに現在では核兵器を表すA(atomic)は、N(nuclear)を使用するのが一般的で、NBC兵器と呼称されます。
パトロンの性質上、研究を主導するのは国防組織であるべきとの思惑から、所長の入江は二等陸佐(中佐)、実質的トップの鷹野は三等陸佐(少佐)の階級を与えられ、自衛隊からの出向者という体裁をとっています。山狗も陸自が保有する秘密部隊です。
入江機関の目的は雛見沢症候群の治療・撲滅も含まれますが、最優先なのは兵器転用できないかという期待もされています。
雛見沢症候群の原因である寄生虫は、宿主が死亡すると跡形もなく消え去り、さらに錯乱状態による同士討ちが期待できる極めて攻撃性の高い病気です。そして治療薬さえできてしまえば、敵地にばらまいた後に自軍の兵士を突入させても被害を受けることはありません。
緊急マニュアル34号
上述しましたが、雛見沢症候群の発症条件は雛見沢を離れること、もっと直接的な表現をすると「女王感染者」から離れることが挙げられます。
女王感染者は代々古手家が担っており、女王感染者に子供が生まれると、その子が当代の女王感染者となります。
つまり、作中では古手梨花が女王感染者となります。女王感染者はある種のホルモンを放出しており、それが感染者たちの発症を抑えているのだと考えられています。
この根拠については、他の寄生虫由来の病気に似た性質を持つものがある、という極めてあいまいなものでした。
しかし、仮に女王感染者が死亡することになれば、そのホルモンの放出が止まり、48時間以内に村人全員の集団発症の危険性が提言されているのです。雛見沢の住人2,000人が同時多発的に末期発症を起こし、錯乱と極度の被害妄想が起こす凶暴化という極めて深刻な事態が予期されています。
根拠はあいまいでも、もし本当だった場合の被害の深刻さを思えば座して放置するわけにはいきません。
基本方針として女王感染者の身を守ることに注力します。入江機関に配備されている山狗の任務の一つが女王感染者の警護であるのもこれが理由です。
同時に、女王感染者の死亡という不測の事態に対応するための緊急マニュアルが策定されていました。
それが「緊急マニュアル第34号」です。
具体的には、火山ガスの噴出を口実に村民を密室に集め、ガス兵器による殺処分が作戦として立案されています。その対応には災害派遣を装った陸上自衛隊の専門部隊があたり、秘密裏かつ迅速に処理されます。証拠隠滅後、何も知らない一般部隊と引継ぎ通常の災害として対外的には処理をすることになります。
ちなみにですが、ここで恐れられていた村人全員の集団発症は、実際には起こりませんでした。
多くの世界で、女王感染者の古手梨花は鷹野により殺害され、緊急マニュアルを意図的に起こしてきました。
しかし、綿流し編および目明し編においては、古手梨花が詩音からの拷問を回避するために自殺、その死体は園崎家地下の古井戸に投げ込まれて行方不明扱いになり、警察が梨花の遺体を発見するまでに数日を要しています。
つまり48時間経過後も村人は発症せず、緊急マニュアルも執行されませんでした。
ただし、罪滅し編のエピローグにおいて、雛見沢大災害後に村出身の人物の多くが異常な行動を取ったとの記述がありますので、全員ではないにしろ一部の感染者は発症を起こしたということでしょう。
発症誘発剤
H173と呼ばれる発症を誘発させる薬があります。
これは治療薬を作成する過程で偶然発見されたものです。
基本的には研究のためにモルモットや人間を意図的に末期発症させるために使用されていましたが、作中現在ではすべて破棄されたことになっています。
が、鷹野はH173を隠し持っていました。
5年目の祟りになる富竹の死亡は、H173により引き起こされた末期症状が原因です。
各編における雛見沢症候群の影響
部活メンバーが引き起こす惨劇の多くの原因は、雛見沢症候群の発症による疑心暗鬼と被害妄想です。
いかにその例を挙げていきます。
鬼隠し編
圭一が発症しました。
親戚の法事で3日間だけ東京に行った際に発症というとんでもない不運が起こっています。通常は数日程度雛見沢から離れたくらいでは発症しません。
引っ越してきたばかりの圭一を気遣って連続怪死事件を伏せた魅音とレナに不信感を持ち、その後症状が進行。圭一を心配する彼女らを、自分を殺そうとしていると思い込みバットで撲殺。最終的に喉の痒みに耐えかねて掻きむしり、失血死しました。
綿流し編・目明し編
詩音が発症しました。
魅音から恋愛相談を受けた際に詩音の中の鬼が目覚めてしまいます。かつて想っていた悟史の失踪を園崎家の仕業だと思い込み多数の人物を拷問の末殺害。
詩音に治療薬を打とうとした梨花を撃退しますが、梨花は拷問による死を別の世界で経験していたため自死を選びます。さらに梨花を探しに来た沙都子を拘束し、悟史が消えた原因の一端を担っているとしてナイフでめった刺しにして殺害。そして説得に訪れた圭一を殺そうとしますが、思いとどまります。
最後には自分と身代わりに魅音を殺害し、詩音として圭一と共に警察に保護されました。
しかし、やはり思い直して圭一の家を訪れ、彼の腹部を包丁で刺して大満足。
ベランダ越しに自分のマンションに変える際に足を踏み外して落下死しました。
ちなみに、彼女はL5の末期状態とされていますが、リンパ腺の痒みを発症していません。
祟殺し編
圭一と沙都子が発症しました。
沙都子の叔父の北条鉄平が雛見沢に返ってくることで惨劇につながります。叔父は沙都子を家に監禁し、家事の強要や隠してあると思っている通帳のありかを吐かせようとします。
その結果、沙都子は強いストレスを受けて症状が進行、あらゆるものを叔父だと誤認するようになります。児童相談所への陳情もいい結果を引き出せません。あまりの沙都子の痛ましい現状を見た圭一は、叔父の殺害を実行します。
この時点で圭一はL4を発症しており、何者かの気配を感じたり、周囲の人間を信じることができずに自分だけで殺人という最後の手段を講じようとしています。
叔父の殺害を察した部活メンバーたちは圭一のアリバイを口裏を合わせて作り出しますが、圭一には自分の偽物が出歩いていると誤解されました。
他にも、殺したはずの叔父がまだ家にいると沙都子が言い出します。これはL5まで進んだ沙都子が見ている幻覚なのですが、圭一にはそんなことは分かりません。
いるはずのない自分と仲間たちが祭りを楽しんでいる。
殺したはずの叔父が沙都子をいじめている。
死体を埋めた場所を掘り返しても何も出てきません。
死んでないならもう一度殺せばいいと再度の殺害に赴きますが、そこから事態は思わぬ方向へ進みます。
罪滅し編
レナが発症しました。
父親が間宮リナと北条鉄平のコンビに美人局を仕掛けられており、相当な金額を払っていました。美人局を問い詰められたリナは激高しレナを殺そうとします。
しかしそれを払いのけたレナが逆に彼女を殺害。
さらに北条鉄平も手に掛けます。
その後に二人の死体をバラバラにして処理していたところを部活メンバーに発見されました。圭一の説得で全員で秘密を共有し、死体を隠し、すべてを忘れることにしましたが、この時点でレナはL3を発症しています。
その後、鷹野からスクラップ帳を受け取ったレナは、雛見沢に陰謀が隠されていると思い込むようになります。そのスクラップ帳は鷹野が趣味で作っているもので根も葉もないふざけた内容です。
しかし、かつてレナは茨城で雛見沢症候群を発症しており、その時の経験と偶然マッチする内容が書かれていたのが厄介でした。
その内容を信じ込んだレナは、鷹野が殺されたのは陰謀に近づきすぎたからだ、さらに今度はスクラップ帳を持っている自分が狙われていると思い込みます。その陰謀を進めているのは園崎家であると思い込み、学校の占拠を行って警察に一斉捜査をするよう強要するのです。
レナはリンパ腺の痒みを早い段階で発症しており、ひっかき傷からウジ虫がわき出している幻覚に襲われています。
その後末期発症まで進み極度の疑心暗鬼と被害妄想により暴力性を発揮してしまいます。
しかし、圭一の捨て身の説得により薬の投与なしに症状が落ち着くという奇跡的な結果に終わります。
とはいえ、その世界も別の原因でさらなる惨劇に襲われるわけですが。
皆殺し編
発症者はいません。
数多の世界で多くの失敗と学びを得てきた部活メンバーは、今や些細なことでは発症まで至ることはありません。この世界は祟殺し編と同様、北条鉄平が雛見沢を訪れ沙都子を連れ去るという最悪の世界です。
今回は詩音が鉄平を殺そうとしますが、圭一の説得で冷静さを取り戻します。誰も発症せず、正攻法で沙都子を救出するという結果を残しましたが、これまた別の原因で全員が死亡することになります。
祭囃し編
鷹野が発症しました。
この世界では、雛見沢症候群ではなく、それよりさらに巨大な敵との戦いがクローズアップされます。黒幕の鷹野は、部活メンバーの抵抗により自分の築き上げてきた作戦や人生そのものが崩れ落ち初め、そのストレスからL5を発症します。
最終的に鷹野は首を掻きむしって死ぬ前に、富竹に助けられ、入江機関で治療を受けることになりました。
まとめ
雛見沢症候群は物語において重要な要素ではありますが、この病気による惨劇を防ぐだけではハッピーエンドにはつながりません。
雛見沢症候群がもたらす症状は、仲間との固い絆で打ち破ることができ、言うなれば圭一たちが惨劇に打ち勝つための途中経過としての役割を担っています。しかし、この病気が原因で入江機関というキナ臭い組織が設立され、千人規模での人命が失われる作戦が立案されているのは間違いありません。
病は病としてのみ存在しており、それを利用しようとする勢力があるのみなのです。
ひぐらしのなく頃に関連記事の一覧はこちら
コメント